夕べは妹と飲み。
いつもはその辺の居酒屋で飲むのだが、安上がりだし、SMサイト.netの拙い料理が気に入っている妹
の提案で、我が家で家飲み。
わりと年中飲んでるから、さして新しい話題も無かったせいもあるからか、妹が突然言い
出す。
「…ねえ、あの人呼ぼうよ」
……………!!!!!!
……まさか、あの男が再び!?
…そう。お馴染みのカピパラだ!!
なんでそんな流れになるんだよ!? お前、実はホントは惚れてんじゃねーの?
「私は好きじゃないけど、あの人はお兄ちゃんの事気に入ってて、また飲みたいって言っ
てたよ~」
……知らん! 迷惑だ!! 何故、自宅にまで招かねばならんのだ!?
だいたいこの前だって、お前ら二人は勝手に盛り上がったけど、こちとら関係無いのに、
大怪我したんだぞ!……責任取れんのか!?
………って、もう呼んでるし!
……なんでこんな頻度で、あんな奴と会わなきゃならないんだ…
もう、ちょっとした『カピパラ旋風』だよ!
なんだよ。この迷惑なムーブメントは?
………ってこのばか、速攻で来ちゃったし
「いやあ、お兄さん。今日はお招きいただきまして、ホントにありがとうございます!!」
……だから、呼んでないんだって。
「あっ!このブリしゃぶ、すごく美味しいですねぇ!」
………いきなり食ってるし…。
しかもそれ、失敗作だよ…。
まあ妹の手前、とりあえずはセックす.netし、キッチンに立つ。
でも何故、俺がこんなに気を使わなければいけないんだろう…?
ツマミまで作っちゃってるし…。
しばらくすると、妹とカピパラの会話のトーンが変わっているのに気付いた。
厳密に言えば、トーンが変わっているのは妹だけだが…。
妹の声には何故か、怒気が含まれている。
……まずいな。これは狂犬になる前兆だ。
とりあえず妹を止めなければ!
これはカピパラではなく、俺の為だ!
いわれの無いとばっちりなど、まっぴら御免だぞ!
あわててキッチンを飛び出した。
…が、時すでに遅し!
「……おめえよぅ…。アタシの事見下してねえか? なめてんじゃねえよぉぉぉ!!」
言い終わるや否や、右のロングフックから左の横蹴りを一閃!
目の覚めるようなコンビネーションだ!
しかも、横蹴りは金的を狙うなど、致命傷を与えることは必至!
……妹よ。俺に内緒で、軍隊に居たことは無いよね?
「ちょっと待ってください!落ち着いて下さい!」
必死になだめるも、こうなった妹をカピパラごときでは止めることなど出来ない。
だから我々兄弟は、細心の注意を払っているのだ。
「おめえ、偉そうに理屈ばっかり言いやがってよぉぉぉ!!」
それからはカピパラに対し罵詈雑言を浴びせ続け、仕舞いには泣き出す始末。
事の発端は、話が恋愛論に至った時らしい。
『人を好きになる感情は本能である』…という妹の意見に対し、『人の行動のすべては理
論ありきである』…と、両者真っ向から意見がぶつかったようだ。
何故こんな話になったかは分からないが、カピパラごときが何を言わんや…である。
お前の理論などで、妹の激情を押さえることなんか出来るか!
それが出来るなら、俺がとっくにやっている。
論破叶わぬ妹だからこそ、わが一族最強なのだ!
「お兄さん!僕はいったいどうしたら良いんですか?……僕は妹さんが大好きなんです!!」
……どさくさに気持ちスワッピング.net言うんじゃねーよ。
なに、兄貴の前で普通にフラれてんだよ。…カッコ悪い…。
カピパラをタクシーに乗せ、送り出した。
妹の高い格闘センスをまざまざと見せつけられ、カピパラの恋物語はこうして終わった。
元々叶わぬ悲恋ではあったが…。
部屋に戻ると、気が済んだのか泣き疲れたのか、妹はすでに眠っている…。
そんな妹に布団を敷き、食器を片付け終わったら、丑三つ時の午前2時…。
百鬼夜行が跋跨する時間だ。
うちの悪鬼は朝まで目覚めることは無いだろう。
……ちっ。また大怪我だ…。
静かになったリビングで、俺は独り、グラスを傾け続けた…。